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この蒐集の間に、わたくしは「弘前医官渋江氏(うじ)蔵書記」という朱印のある本に度々(たびたび)出逢(であ)って、中には買い入れたのもある。 わたくしはこれによって弘前の官医で渋江という人が、多く「武鑑」を蔵していたということを、先(ま)ず知った。 そしてこの目的を以て「武鑑」をあさるうちに、土佐の鎌田氏が寛永十一年の一万石以上の諸侯を記載したのを発見した。 さて誤謬は誤謬として、記載の全体を観察すれば、徳川時代の某年某月の現在人物等を断面的に知るには、これに優(まさ)る史料はない。沼田さんは西洋で特殊な史料として研究せられているエラルヂックを、我国に興そうとしているものと見えて、紋章を研究している。